戦場から届いた遺書 (文春文庫)



戦場から届いた遺書 (文春文庫)
戦場から届いた遺書 (文春文庫)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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最愛の人へのメッセージが胸を撃つ

この本は太平洋戦争中に、真珠湾奇襲に始まって、南方戦線での死闘、特攻隊の出撃、戦艦大和の最後、シベリア抑留と様々な状況下で、主に兵隊さんが
遠く離れた妻や母親、子供達を思って書いて送った遺書を集めただけではなく、その後の家族のことや、当時の戦況を丹念に取材して綴った珠玉のノンフィクションとなっています。自分の最期を覚悟して最愛の人に向けて書いたメッセージがこんなに胸を撃つとは・・・。あの戦争で散っていった何百万という名もない命の一つ一つにこんなエピソードがあって、悲しむ人がこんなにいたのか、と思うと切ないのと同時に、誤解を生む言い方かもしれませんが、
こうして戦争で亡くなった方々に対して何故か熱い尊敬というか、感謝にも似た思いが湧いてきます。もちろん戦争は悪いこと、二度と起きて欲しくないことですが、彼らの苦しみがあったからこそ、今の平和な日本があると思うから。
戦争で犠牲を強いられるのは常に「家族」

 本書はNHKの教育テレビで2002年に放送された「人間講座」のテキストを加筆修正したものです。著者の以前の著作である「収容所から来た遺書」(文春文庫)の流れを汲み、あの戦争で命を散らした兵士たちが家族に送った遺書を集めて、戦争の悲惨さ、理不尽さについて訴える書です。

 先のイラク戦争でも感じたことですが、戦没者というのは「死亡者〇人」といった具合に数字で括られてしまった場合、「顔の見えない」存在として終わってしまいます。戦争の怖さはそこにあります。連日の戦争報道に心の受信機能が麻痺ぎみの私たちには、数によってのみ表現される犠牲者というのは存在がとても希薄なものと映ります。

 しかし本書に掲載された数々の遺書を目の当たりにすると、戦争で命を落とす人たちは家族にとってはかけがえのない父や息子や夫であり、名前と顔を確かに持った人々なのだということを改めて感じます。無残にも命を断ち切られた彼らが家族に宛てて精一杯の愛情と、そしておそらく精一杯の強がりを込めて綴る手紙は、言葉では表しきれないほどの悲しみで私たちを衝いてくるのです。

 戦艦大和とともに海に沈んだ兵士が両親と妻に宛てた遺書が特に私の胸を締め付けました。自分の死後、妻が困窮しないように両親に援助を頼み、また妻自身が亡き夫に気兼ねして再婚を躊躇することのないように厳しく諭したその文章は、深い愛情に満ち溢れた名文です。

 戦争で犠牲になるのは「兵士」ではなく「家族」であるということを認識させてくれる書として広く読まれることを期待します。



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